ヒストリック・ガールズ

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 私は、田んぼの真ん中にいた。  普段なら緑の稲が風にゆれる田んぼは、今年は土壌改良とかいう物のため、工事中だった。  土は削られ、小さな山になっている。  たまたま近くにいた私には、そこが一番安全そうだった。  それでも、水筒をぶつけた代償にドラゴンの炎は、私を吹き飛ばした。 「第一町人、発見!!」  悲劇は、その声と重いモーター音によって止められた。  痛かった。けどケガはない。  気がつくと、人間の手をそのまま大きくしたようなメカの、手のひらに張られた硬いゴムの中にいた。  目の前には、真っ赤な、いかにも装甲でござい! という感じの金属の塊が。  塊は、真っ赤な人影。高性能な人型ロボットだと。  背中には、稲妻をデザイン化したような、曲がった鉄柱のような物がある。  そのギザギザだけ、なぜか灰色だ。  でもその時は、そんな物があるわけないと思った。  だって、バラエティ番組に出た時、見たことがあるから。  のろのろ動くアート作品としてしか、三次元にはないはずだから。  でもそれは、膝立ちの姿で両足の足首と膝にある4つのタイヤで駆け抜ける。  その装甲が、ハッチになって上に開いた。  後から手が伸びてきて、それが開けたんだ。  振り返ると、灰色の人影があった。  顔まですべて、近未来SFを思わせるアーマーと呼ぶのかな? で覆われた人だった。  背中から金属でできた鳥のような羽が生えている。  アーマーの人は、私をロボットの中に押し込んだ。  その時、装甲に手を触れた。  日光に熱された熱さを予想したけど、感じなかった。  薄いけどやわらかい。  ウルシを使った漆器のお茶わんのような感触だった。  中には誰もいない。  モニターで覆われた狭い操縦席に座らされ、勝手にシートベルトをかけられていく。 『“ドラゴンメイド“は、“チーム疾雷“と共に空の“オーバオックス“を持って跳びだしていきました』  どこかの会議室と無線がつながっているのか、何人かのざわめきが聞こえる。  空のオーバオックスと聞いて、自分の押しこめられたロボットの事だと察した。
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