ヒストリック・ガールズ

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 変わったものを覚えるのは得意なんだ。  歌詞を考えるとき、そのモチーフに使えるから。  その時、停車した大きなバイクの横を通り過ぎた。  前後左右に棒が伸び、その先に大きなプロペラがある。  これも見たことある。  ただし外国からのVTRで。空中バイクだ。  ライダーは私たちがいた方向に向けて、銃を撃っている。  その銃は長くて、銃火は絶え間なくて。  アサルト・ライフルに違いない。  頭が興奮で真っ白のまま、視線でそのライダーを追った。  バイクはハンドルの上に金属らしい板、シールドを乗せていた。  射撃を終えライダーは、慣れた手つきでライフルを背中に回し、シールドをリア側に移す。  私たちとの距離が十分離れたからだろうか。  空中バイクはふわりと宙に浮き、路面や川を無視して駆け抜ける。  田んぼを挟んだ向かい側の道には、大きなSUVが何台もいる。  その屋根の上から光るのは、機関銃や大砲の火だ。 (これが、チーム疾雷?)  あとわからない単語は、ドラゴンメイド。 (メイドの意味は、家政婦? それともお嬢さん? ) 『彼女だけ、なにかを探知したのかもしれません』  ざわめきを聞いてもわからない。 「そうだ! 私の家は!?」  もうずいぶん離れた。  振り返っても見えない。  と思ったら、「ここよ!」  目の前の人が、モニターを指さした。  女の子の声だ。 (何でわかったんだろう)  女の子はそう言うと、重そうな装甲を腕の力だけで閉めた。  確かにモニターの一部には、我が家が映しだされていた。  黒い瓦屋根にソーラーパネルが乗っている、個人ファミレスの応隆軒  ドローン。カメラが付いた無線操縦飛行機でも飛んでいるんだろうか。
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