1989年の悔恨

14/18
前へ
/29ページ
次へ
12月25日を過ぎたクリスマスケーキが売れ残ってしまうのと同様、二十五才を過ぎた女は売れ残りとなって婚期を逃してしまうという意味だ。  だから当時は社会に出てから結婚相手を探すつもりならば、交際期間も考慮して社会人になるのは早い方が有利だった。 その一方、高卒よりも短大卒の方がきちんとした家庭の出身で、かつ教養のあるお嬢さんぶりをアピールでき、釣書(つりがき)上なお有利だったのである。  芳子は短大卒業後に入社した会社で順調に結婚相手を見つけて二年ほど交際し、世間の標準通り二十三才で結婚して、二十四才の時に男児を出産した。 十年前とは異なり誰からも祝福され、誰よりも自分自身が望んだ形で子供を得たのだ。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加