1989年の悔恨

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 まだ二十歳にもならない愛息を亡くしたショックが冷めやらぬ数か月後、今度は夫を肺炎で突然失う。 正直それほど深く彼を愛していた実感はあまり無いけれども、最愛の息子に続き、信頼に足る真面目な伴侶を失くした衝撃は大きかった。  大切な家族を全て失ってしまい、今の自分は抜け殻のようだと芳子は思う。 だからこうして今、捨てた娘に会いたいと思うのは酷く手前勝手で、居心地が悪いような気もする。 素直な気持ちを吐いてしまえば、本当に彼女に会いたいと思っているのかどうかすら微妙なのだ。
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