1989年の悔恨

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 当時の芳子の心情としては排泄を済ませた感じだった、文字通り排泄物の。 ふわふわ泣き続ける真っ赤なサルみたいな生き物を胸元へ押し付けられ、十四才のものとは思えない位に醜くなった乳を吸われている間も、ようやく産み出した小さな命に一片の愛おしさすら覚えなかったのである。 ロクに性知識が無かった中学一年生の女子を妊娠させておきながら、困り果てて相談しても無視を決め込み、無責任にも逃げようとしたロリコン大学生の子供なんかに。 母子家庭で奨学金をもらいながら大学へ通っているような苦学生だったから、胎児の内に中絶手術させる費用すら負担出来なかったのだろうが。
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