雪女の充血

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そんな恐ろしい雪女の存在が 信じられているこの田舎で 俺は今、 冬の夜の道を一人で散歩していた。 別に俺も 雪女が怖くないわけでもないのだが、 ではなぜ こんな自殺行為をしているかといえば、 それはただ単に 自暴自棄なだけだった。 この田舎から 電車で少しの都会にある 大学に通う俺は 就職活動の真っ最中で、 しかしなかなか内定が出ず、 冬になっても決まらない就職に焦っていた。 今日受けた面接も 手ごたえはなく、 やけになって 一人で部屋で飲もうと コンビニであれこれ買い漁り、 でも そのまま家にも帰りたくなくなって、 ぶらぶらビールを飲みながら 夜の町をあてもなく散歩していた。 前回不自然な凍死体が発見されてから 今年で二十四年経つらしく、 もうそろそろ 次の犠牲者が現れても おかしくない年なので、 外を出歩いている人は ほとんど見かけなかったが、 誰もいない 夜の町を 一人でぶらつく俺は 雪女の出現をどこかで期待していた。
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