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ある雪の降る夜、
雪道を一人で歩く男が
ふいに後ろから声をかけられた。
「ねえ、雪って、きれい?」
そう聞く女の声を不審に思って
ゆっくり振り向くと、
男は
女の姿を見て驚いた。
女は
こんな雪の降る
凍える寒い夜なのに
白装束一枚に、
使い古された薄い草履を履き、
体形は
細くてすらりとした長身で、
白装束に映える真っ黒な髪の毛は
腰の辺りまで真っ直ぐ伸びていて、
僅かに覗くその肌は
雪というより陶器のような、
およそ人間らしさを感じさせない
無機物のような白さで、
そしてそんな肌で覆われた顔は
真っ白で綺麗な顔立ちだが、
頬がこけて大きくひびが入っており、
そしてその両の目は
真っ赤に充血していて、
純白な顔の中で唯一の
鮮やかに浮かぶ赤だった。
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