雪女の充血

5/32
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
「ねえ、雪って、きれい?」 そう女が もう一度聞いてきたので、 男はどう答えていいものか分からず、 とにかく急いでこの場を立ち去りたかったが、 女の あの真っ赤な目を見た瞬間から 男の体は全く言うことを聞かず、 その場に立ちつくしたまま 少しも動かなくなっており、 いや全身ではなく首から上は動かせるようで、 どうやら声を出すことと 僅かに首や顔を動かすことは 許されているようだった。 「ねえ、雪って、きれい?」 三度そう聞く女の顔は さっきよりも頬がこけて ひびが広がっており、 目の充血はさらに濃くなり、 鮮やかな赤から どす黒い不気味な赤へと 徐々に変色していた。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!