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「優生くん、言ってなかった?」
「あぁ、言ってましたけど……」
萌ちゃんママが、続ける。
「うちほら、1歳児の頃から園にいるし、銀太くんの悪評も身をもって知ってるわけじゃない?さすがに、先生のとはいえ髪切ったなんて聞いたらねぇ。心配になっちゃって」
心配、というよりは好奇心が混じっているその瞳に、きょう先生の困惑しているのを感じる。
「あぁ~……。ですよね、あ、でもみさ先生がそりゃもうしっかりと銀太くんに言い聞かせていたので、今後またハサミでどうこうとかは絶対ないと思います!僕たちもそこはしっかり注意して見てますんで!」
「あら、そう?なんか銀太くんのママって、銀太くんが悪いのになかなか認めようとしないでしょう?嫌なのよね、巻き込まれるの」
「銀太くんも以前よりはしっかり自分の意志を言葉で伝えられるようになってきてますし、そこは、はい。僕たちも他のお子さんになにかっていうのは防ぎますので……」
「今までのことがあるから、ね。不安になっちゃって」
「それは……そうですよね、不安になるのはすごくわかります。今回のことも、園児じゃなくてみさ先生で良かったねって僕たち言ってて」
「それはほんとそうよ。園児が相手だと大問題になってるわよ。そういうの、あのお母さん全然分かってないのよね。甘やかされて育ったんじゃ、銀太くんもやりたい放題するわよ」
「あ、でも銀太くんはお友達に対してすごく優しい一面もあるんですよ、こないだ……」
きょう先生の言葉を遮り、はぁ、と大きくため息をこぼし「でも銀太くんって」と言葉を続けようとする萌ちゃんママに、私はわざと「あ!」と声を上げ、さっとスマホの画面を見せる。
「あ、ごめんなさいお話し中に。ね、これ、良くありませんか?サンタさん柄の立体パズル。このくらいなら年少さんにも組み立て易いかなぁって。予算内ですし」
にっこりと笑う。萌ちゃんママがスマホ画面に目を近づけ、画像を拡大する。
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