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優生が何かしたのかと思い、少しの不安を抱えながら、きょう先生と優生から距離を取った。
話が聞こえるか聞こえないかくらいの場所に私たちは立つ。
「すみません、優生が何か……」
そう聞くと、言いづらそうにみさ先生が口を開いた。困ったような顔をしながら。
「すみません、いつお伝えするか、迷っていたのですが」
「はい」
「……初めて今日役員会議に出席していただいたので、役員の雰囲気も分かっていただけたかと。それで、あの」
みさ先生が私の顔を見る。いつもの笑顔はなかった。
「任期の間は、妊娠することはお避けいただけたらと思っています」
一瞬、何をお願いされているか分からず、私は思わず「え?」と彼女の言葉を聞き返す。
「いえ、あの最近優生くんが、うちにも赤ちゃんがくる、と言っていたので……。今まで、任期途中で妊娠されて、つわりや体に何かあったらということで任期途中で役員を辞められるお母さんもいらっしゃって。……正直、困るんです」
正直、困る。まさかそんな言葉をみさ先生から聞くとは思わず、私はただ唖然としてしまう。
こんなことを、まさか先生の口から聞くなど。言いづらいことなのだということは、両手のひらを重ねたみさ先生の動作で分かる。
「こまる……」
思わず呟いてしまう。
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