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「今、もし妊娠されているならそれはもう仕方がないので他の方に役員をお願いしようと思っていますが、どうですか?」
口角だけを少し上げ、私に問うた。
「あ、いえ。今は……」
思わず、自分のお腹に手を当ててしまう。赤ちゃんの入っていない、空っぽの、お腹。
「なら安心しました。引き受けていただいたからには、任期中は責任を持っていただけると助かります!よろしくお願いします」
私に向かって、深々と頭を下げたから、みさ先生がどんな表情をしているかが分からなかった。
責任……。
顔を上げないみさ先生に、私はぺこりと一礼して、優生ときょう先生のほうに向かう。
優生の手を取り、きょう先生に挨拶をしてから背を向けた。
聞こえていたのだろうか、きょう先生が気まずそうな顔で私に「お疲れ様でした」と言った。
「ねぇママ、何のお話してたのー??」
手を繋ぎ、私の顔を見上げる優生に、返事ができなかった。
「ねぇ、ママぁ」
「……」
返事をしない私に対して、不安な顔をしている優生にすら気付けなかった。
―妊娠することはお避けいただけたらと思っています―
みさ先生の言葉が、小さく頭に響く。
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