もう一人の俺

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 必殺技ゲージがたまりきっていても全方位に隕石を落とすみたいな呪文を念じても発動しない。  必殺技ゲージが減るだけである。 「お返しだ! ライトニングブレード!」  雷の剣を纏った水菜が俺に斬りかかった。  必殺技を使えるっていうことは、水菜もおそらく公式サイトから操作方法を知ったのだろう。 「うわ!」  痛くはないが、リアルな映像だけに思わず声をあげた。  体力は一気に残りわずかになった。  ポケモンでいうと気合のタスキでHP1まで耐えたみたいな感じだ。 「これでとどめだ!」  水菜が文字通り、とどめを刺しに来た。 「フラッシュ!」  杖を掲げ、呪文を唱える。 「うぉ、眩し!」  水菜が叫んだ。  この呪文には全くもって攻撃効果はない。  単にまばゆい光を発生させるだけの呪文である。  俺は水菜が怯んだ隙に木の影に隠れた。  そして、俺は水菜から距離をとった。  俺は作戦を考えた。  今気づいたが、何もしない間は、わずかだが体力ゲージが少しずつ回復している。 「くっそー! どこいったー」  水菜の叫び声が聞こえてきた。  というか、リアルで叫んでるのだが。  フレイムボールをもう一発当てれば恐らくは勝てるのだろうが、さっきのは蜘蛛を使って運良く隙を突くことができた。     
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