1、雪ねこの夜

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1、雪ねこの夜

あれは静かな夜のことだった。 小さなこんぺいとうのようなぼたん雪が、外灯に照らされて、悠々と地上に舞い降りる。 幻想的なその光景を、暖房のきいたリビングで、ぼくは窓枠にしがみついて眺めていた。 「雪ねこがまぎれていそうな降り方だな」 隣にいた父が言った。 「雪ねこ?」 思わず見上げてたずねるぼくに、 「そう。雪ねこ」 ひみつめかして、父が低く囁き返す。 「米粒ほど小さくて、真っ白なねこさ。雪のフリをして降ってくるんだ」 「僕も雪ねこ、つかまえたい!」 「ははは。それはどうかなぁ。雪ねこはすばしっこいんだ。子供につかまるほど鈍臭くないさ」 父が快活に笑い飛ばした。 「それに雪ねこは、つかまえると、すぐに溶けるそうだ。だから、雪ねこの姿を見た者は誰もいない」 「えーっ、じゃあ、つかまえたかどうかも分からないじゃん!」
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