数字が読めない日

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 ※※※ 「おはよう」  ゆっくりと身を起こした私は、手元のシーツを抱き寄せる。 「コーヒー、持ってきたよ」 「……ありがとう」  彼は窓辺に座り、朝のコーヒーを飲んでいた。  服装もちゃんと整えて、きちっとしている。  ……まるで、今すぐにでも、出かけられそう。 (夜と、同じだね)  日付が変わる時、確認した。  彼の頭の数値は、やっぱり……『0』。  もう、『1』ですらない。 (完全に、終わりなんだね)  ――私とあなたが、恋人で、いられる時間は。 「今日は良い天気だよ」 「そう、ね」  朝焼けの彼は、とてもすがすがしく、コーヒーを飲む姿がよく似合っていた。  いつも遅く起きる私は、その横で、アイスコーヒーを飲むのが好きだった。  本当に、いつもどおりの、目覚めだった。 「……今日、出発だね」  別れの瞬間を想像して、辛くて、仕事の話をふる。  そうだね、と小さく言った彼。  でも、それが……彼の顔を変える、きっかけとなった。 「言いたいことが、あるんだ」 「……うん」  ぎゅっとシーツを握りしめ、彼の言葉を待つ。  わかっているのに、この瞬間は、いつもなれない。
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