数字が読めない日

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 ――今日は特別な日だ。  ――彼と恋人でいられる、最後の日だから。 「お待たせ」 「ううん、今来たところ」  時間より少し過ぎた、待ち合わせ。  息が荒い彼は、急いできたのだろう。  申し訳なさそうにする姿は、誠実な彼らしい。 (……いろいろ準備もあって、大変なのに)  微笑みながら、私は気にしてないよ、と応えて慰める。  ――気になるところは、別にある。 (やっぱり、数字は『1』か)  彼の頭上には、私にしか見えない、ソレがある。  ――ソレは、赤色の数字。  天使のわっかが実在したら、こんな感じに浮いているんだろうか。  拳くらいの数字が、彼の頭のあたりに浮かんで、輝いている。 (……見たくなんて、ないのにな)  彼とのデートコースに入りながら、私は、その数字に散々苦しめられた過去を想いだす。  ――これは、私と彼の、恋人期限。  ――赤色の数字が『0』になると、二人の関係は、いつも終わってしまう。
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