7人が本棚に入れています
本棚に追加
(こんなにも、楽しいのに)
外注先としてのつきあいで、彼と知り合った。
趣味や性格があった私達は、少しずつ出会って、恋人同士になった。
互いに関係を深めて、心配ないなって想った矢先に、それは決まった。
――彼は明日から、遠い異国の地に旅立つ。
――そして今、彼の頭には、赤色の『1』が強く輝いている。
(転勤が決まってから、決めたのかな)
どうしてそうなのか、私にはわからなかった。
でも、赤色の数字がくつがえったことは、今までの関係で一度もない。
前もって機嫌をとっても、別れの日に問いただしても、元恋人達の心が変わることはなかった。
……正直、他人の心を盗み見ているようで、好きな能力じゃない。
(やっぱり、赤色だな)
赤色は、もう心が揺らがない証拠。
青色なら、上がったり下がったりして、私への気持ちが変わったりすることもあるけれど。
……なのに、彼の数字は、まぎれもない赤。
「どうしたの、そんな顔して」
「へっ!?」
心配そうに覗きこむ彼の顔に、ドキリとする。
「な、なんでもないよ。少し、見とれてただけ」
「……そ、そう」
恥ずかしそうに顔を赤らめる彼は、うん、かわいいな。
(……今までは、露骨に態度変えられたりしてたから、わかりやすかったのに)
――逆に、いつもどおりに優しくされたら、耐えられるんだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!