数字が読めない日

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(こんなにも、楽しいのに)  外注先としてのつきあいで、彼と知り合った。  趣味や性格があった私達は、少しずつ出会って、恋人同士になった。  互いに関係を深めて、心配ないなって想った矢先に、それは決まった。  ――彼は明日から、遠い異国の地に旅立つ。  ――そして今、彼の頭には、赤色の『1』が強く輝いている。 (転勤が決まってから、決めたのかな)  どうしてそうなのか、私にはわからなかった。  でも、赤色の数字がくつがえったことは、今までの関係で一度もない。  前もって機嫌をとっても、別れの日に問いただしても、元恋人達の心が変わることはなかった。  ……正直、他人の心を盗み見ているようで、好きな能力じゃない。 (やっぱり、赤色だな)  赤色は、もう心が揺らがない証拠。  青色なら、上がったり下がったりして、私への気持ちが変わったりすることもあるけれど。  ……なのに、彼の数字は、まぎれもない赤。 「どうしたの、そんな顔して」 「へっ!?」  心配そうに覗きこむ彼の顔に、ドキリとする。 「な、なんでもないよ。少し、見とれてただけ」 「……そ、そう」  恥ずかしそうに顔を赤らめる彼は、うん、かわいいな。 (……今までは、露骨に態度変えられたりしてたから、わかりやすかったのに)  ――逆に、いつもどおりに優しくされたら、耐えられるんだろうか。
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