数字が読めない日

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 問いかけることもできない私は、なら、と考えを変える。 「ねえ。今日はめいっぱい、楽しもうね」  少し驚く彼に、私は手を引いて、足を弾ませる。  ――そう。せめて、夢を見るなら。  ――最後まで楽しい夢を、見ていたいものでしょ?  それから私達は、いつも以上と想えるくらい、楽しい時間をすごした。 「よかったの? 見慣れた場所で」 「うん。だからこそ、よかったの」  歩き慣れた街並みに、通い慣れた商店街。  少し離れた街へ出て、お気に入りの店でいつもの食事。  願掛けをした神社に挨拶をして、ウィンドウショッピング。  気になった喫茶店でゆっくりしたら、夕食も同じようにフィーリング。  その全てが、まるで付き合い始めた頃のように、弾んで心地よいのに。 (こんなにも、好きなのに)  ――彼の頭上の数値は、赤の『1』のまま、変わることはなかった。
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