数字が読めない日

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(えっ、えっ、えっ、どういうこと!?)  彼の頭をじっくり見ても、数字は変わらず……変わら、ず……? (あれ、なんか……ダブって見える?)  彼の頭の数字が、二つに増えていた。  それは、『0』と『0』。  横並びのそれが、ゆっくり、混じりあうように合わさって……。 (∞……無限大……って、おい!?)  ……なんてことだ。  赤色の『∞』の文字に、私は想わず絶句してしまう。 「顔、赤いよ。大丈夫かい」  ――いや。あなたの真っ赤さも、大概ですよ?。 (えっ、っと。もう、期限なんてないって気持ちは……?)  求められている喜びに、身体と心の熱が、止められない。 「あの。答え、ちゃんと聞かせてほしいんだ」  惚けた私に、彼は、まっすぐな瞳をぶつけてくる。 (……あぁ。本当、ごめんなさい)  ――数字なんて、信じちゃいけなかった。  ――彼の誠実さは、私が一番、知っていなきゃいけなかったのに。 (そのために身構えて、正装するくらいだもんね?)  微笑みながら、自分の方がなにも考えてなかったと想い、反省する。  ゆっくりとシーツを身体に巻き付け、私は、正座した。  不思議そうに見つめてくる彼に、三つ指をついて、軽く頭を下げる。  そして、心の中で謝りながら、彼への想いを口にした。 「――数字も読めない女ですが、よろしくお願いいたします」  少し不思議そうな顔の後、彼は声にならないガッツポーズ。  その様子に、私は満面の笑みを浮かべる。  ……ごめんね、あなたを疑って。 (もしこれから、『0』になっても、ならなくても)  ――私は、あなたの気持ちを信じよう。  その数字に、惑わされず。
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