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扉を開けてすぐ、私は心臓が止まるかと思った。
それは予想だにしないことだった。
誰が想像できただろうか、家の前に先輩がいるだなんて。
「遅い」
先輩は低い声で私を見据えたまま言う。
一方の私は驚き過ぎて言葉どころか身体が硬直してしまっていた。
「お前…いつもこんなに遅せぇのか?」
「……」
「ったく…。早く学校行くぞ」
「……」
先輩は私の手を握ると、ぐんぐんと歩き出した。
まるで昨日の帰り道の再現をしているようで、夢かと思うくらいだった。
先輩の明るい色をした髪の毛が朝の光に反射して眩しい。
昨日といい今朝といい私は先輩と約束をしていただろうか…?
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