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5話 変質
怪しい男を追ってたどり着いたのは、郊外にあるレンタルコンテナだった。
広い土地に鉄製のコンテナが立ち並び、それを使用料を払って使えるレンタルコンテナ。男はそこに入っていった。
智仁は少し悩んだが、姉のためなら自分のことはどうでもいいと決意して裏に回る。そして柵を乗り越えて、レンタルコンテナの敷地に侵入した。
並び立つコンテナの影に隠れ、あの男の姿を隠す。夜更け前にレンタルコンテナを動き回る人影はそうおらず、すぐに見つかった。
男はまるで人目をはばかるようにしきりに辺りを気にしており、智仁も注意深くを身を隠さねばらなかった。だがその不審な態度が智仁の中の予感を強めていく。
やがて男は敷地のかなり奥、開ける側がコンテナ同士の内側になっており外部からは見えないコンテナへとたどり着き、その鍵を開けた。
すぐに智仁は駆け出した。これでただの勘違いならそれでいい、平身低頭して謝り、男に殴られたり蹴られたりするくらいは覚悟の上だ。だがもはや嫌な予感は膨らみ続け、確かめずにはいられなかった。
コンテナの前へと回り込み、男が閉めようとしていた戸に手をかけて一気に開け放つ。敷地の照明に照らされて、驚いた顔の男とコンテナの中が智仁の目に飛び込む。
姉は、黒川麗は、そこにいた。
無機質なコンテナの床に体を横たえている。弟が現れたことにも気付いていないのか、その目には生気がない。端正な顔はやつれこけてしまっていて、さらわれてからずっと着ていたであろう服は汚れていた。
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