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その日の放課後。
つばさはテニス部の活動に出席するために、グラウンドの隅にあるテニスコートに来ていた。
「あれ?」
集まっている女子テニス部の面々を見て気付く。麗がいない。
「え? ああ、黒川さん? 今日は体調が悪くて休むって言ってたわよ」
顧問の先生にそう答えられ、つばさは肩を落とした。テニスは好きだが、やはり憧れである麗がそばにいるのといないのとではモチベーションが違う。朝とは違い憂鬱な放課後になりそうだ、などと思っていた。
「ほーら、エースがいなくっても練習は練習! そうだ田岡さん、今日は新品のボールが入ったから、倉庫まで取りに行ってもらえる?」
「あ、はい。でも私1人だけだと勝手が……」
「もちろん上級生もいっしょに行ってもらうわよ、半分はあなたが倉庫を使う練習だもの」
顧問の先生が近くにいた2年生に声を掛ける。その横でつばさは、麗に近づくためにも練習はがんばらないとな、と、気合を入れ直すのだった。
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