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3話 『皮』
重い倉庫の扉を開ける。中に広がっていた惨状に、黒川麗は思わず舌打ちした。
「手遅れか……」
麗の前にいたのは口から大量の触手を垂らす女生徒と、倉庫の床に力なく伸びた……『皮』。
麗はすぐに判断する。『皮』に『中身』が入っていない、おそらくは捕食して間もないのだろう、なら。
「いや、ギリギリか!」
麗は『中身』を解き放った。背中の皮膚をビリビリと裂き、服の隙間から飛び出したのは4本の触手。いずれも赤く醜い血の色をし、脈動していた。
「ばごっ」
同族の気配に気付いた触手とその宿主たる女生徒が視覚情報でも麗を捕らえようとする。
だがそれと同時に、麗の触手がその女生徒の触手のいくつかの場所、紫色に膨らんだ個所に正確に突き刺さった。
「ごごっ!?」
触手で満ちた女生徒の喉からくぐもった苦悶が漏れる。当然だ、急所を貫かれたのだから。
麗は一切の躊躇なく、捕食を始めた。倉庫に女生徒がもだえる声が響き渡る。
「たまには味わってみろよ、食われる側の気持ちをよ……!」
女生徒の体がのたうち回り、その先の触手も狂ったように暴れる。だが麗の触手に抑えられ、いくら暴れても倉庫の物品が散らばるだけだ。そんな様子を、黒川麗は憎悪のこもった目で見ていた。
麗の背中から伸びる触手が膨らむ。反対に、少女の口の触手は縮んでいく。麗の触手は先端から毒々しい紫色に染まっていき、その紫色は触手の根本、本体たる麗へと送られていく。捕食が行われる度、食われる側の触手は縮んでいった。
それは女生徒にも及んだ。
「お……ごっ……ご」
口から垂れる触手が縮むにつれ、女生徒自体も縮んでいく。その皮膚がたるみ、肉が失せて……『皮』だけになっていく。
「終わりだ」
冷たく吐き捨てる。女生徒に巣くっていた触手はその全てを食われ、跡形もなく麗の中へと消え失せる。残ったのは、女生徒として動いていた『皮』だけだった。
すぐに麗は倉庫の奥へ進む。目的はそこにあるもう1枚の『皮』だ。
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