16人が本棚に入れています
本棚に追加
『皮』は仰向けになるように広がっている。セーラー服に覆われて、破裂した後の風船のように潰れている。手も、足も、胴も、全身から厚みというものがすべて失われている。
だが『皮』は生きている。
注意深く観察すれば『皮』はピクピクと動いている。触れれば暖かみもある。筋肉も、内臓も、骨もないのに、『皮』はたしかに生きている。
『皮』には意識があるのだ。だがそれ以外は何もない。死にかけの虫けらよりも僅かに震えながら、音もなく、光もない中、ただただ「助けて」と繰り返すだけ。
ギリッと麗は歯噛みして、その『皮』へと、背中の触手を伸ばした。
ペラペラの口を持ち上げて、その中に触手をねじ込ませる。一切の抵抗なく異物を受け入れた『皮』は奇妙に歪み、ボコボコと醜く変形を始めた。麗は目を閉じて触手を送り込み続ける。
触手は『皮』の内部で膨らんでいき、あたかも新品の布団にワタを詰めるように『皮』の中で広がっていく。歪んだ肉がだんだんとならされ、生きた人間であるかのように見てくれを作っていく。
やがて麗は触手を切り離した。切り離された触手は『皮』の中へ飛び込み、顔の中をもぞもぞと動き回る。その度に変形し歪む少女の顔。
やがてそれが安定していくのを見届けると、彼女はもうひとつ床に伸びている皮に同じことをするため、『中身』の入った『皮』に背を向けた。
最初のコメントを投稿しよう!