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大都市のボストンとは違って、クラシカルな雰囲気がある。冬のセイラムは昼間でもモノトーンだ。白と黒、その二つの色が町を支配していると言ってもいいだろう。さっきから町の人達とすれ違うが、着ている服はというと、男性は黒のコート、女性も黒のコート、たまに灰色のコートも見かけるが、黒いドレスを身にまとっているレディが多い。色彩豊かとは程遠いのだ。また人々は、無駄話をしない。優雅に物静かに歩いている。静寂と沈黙が入り混じった町──都会暮らしの僕にとって、セイラムの町の光景は、色々と物珍しい。
ドロシーお祖母ちゃんの家に着いた。石造りの家は、住宅街にありながらも、ひっそりと佇んでいる。
ここだ。ここがドロシーお祖母ちゃんの家だ。
最後にドロシーお祖母ちゃんに会ったのはいつだっただろう? あまり覚えていないや……緊張と興奮が入り混じり、僕はドアノブに触れた。
と、その時だった。
突然、ドアが開いた。
「うわっ!」
僕は、驚いて後退りした。
見上げると、そこに居たのはドロシーお祖母ちゃんではなくて、全く知らない女性だった。彼女も町ですれ違った人達と同様に黒いドレスを着ていた。
女性から物憂げな眼差しを向けられる。
「どこの子?」
落ち着いた声が、頭上から降ってきた。
「……」
それは僕が訊ねたい。どうして祖母の家に見知らぬ女性が居るのか。
「窓から君が挙動不審な動きをしているのが見えたから、気になって観察していたんだけど」
僕を観察?
しかも挙動不審って──まあ、確かに初めて訪れた町、初めて見るものに興奮して、町の人達から見れば変な他所の子供に見えたのかもしれない。
だけど、あなたこそ誰ですか?
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