夢の夜行バス

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 僕はバスが向かう先に目線を移した。ここがどこかもわからなかったが、前に進んでいることだけは感じていたかったのかもしれない。オレンジ色の道路灯が延々と続いており、これが東京に通じているとは思えなかった。対向車線を走る車は一台もなかった。雪は降り続け、いつの間にか僕は寝ていた。  そして夢から覚めた。  小鳥のさえずりや小川のせせらぎといった心地よい人工音が頭に流れる。視界がはっきりすると、凝り固まった腕と肩の関節を無理に動かし、私の身体を包むカプセルの窓に触れた。その温度は氷点下のはずだ。しかし、紙を触っているように温度は感じなかった。私の身体もカプセルの中で極低温に冷やされているためだった。  私はとある惑星へ向かう船に乗っている。身体や船への負担軽減、食料問題等の解決のため、航海中、乗組員は基本的に冷凍睡眠状態にある。ただし、冷凍状態における自然脳へのダメージを最小限にするため、24,000時間毎に5分間だけ覚醒する。     
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