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夢の夜行バス
がたん、と揺れた気がした。
目を覚ますと、首と腰の痛み、それに喉が貼りつく苦しさがあって、自分が東京へ向かう夜行バスに乗っていたことを思い出した。窮屈な座席に押し込められている上、暖房の効きが悪いのでつま先が酷く冷えている。手でスマホを隠しながら画面を見ると、場違いな明るさで午前2時、圏外と知らせる。目的地まではまだ5時間以上かかる。
スマホは圏外でバッテリーも気になったので早く寝たかったが、寒さで目が冴えてしまった。眠れそうにないので、僕は外からの光が漏れないようにカーテンの下から頭をくぐらせ、窓の外を見た。
雪が降っていた。
山間の田舎町で育った僕にとって、雪なんかこの時期には珍しくない。それでも、バスのスピードによってすぐに後方へと流されていく雪は、僕がいつも見ているものとは全く別の現象に思えて、落ち着かなかった。
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