1  止まった時間

2/5
前へ
/25ページ
次へ
   金曜日、陸上部は週に一度の市営競技場での練習日だ。  観客席には練習を見学する生徒たちが数人。  わたしと親友の島田果歩もその中にいる。 「ここいいよねぇ。見学してても誰にも文句言われないし」  隣で果歩が幸せそうに笑う。 「学校じゃあまり見られないもんね――あ、慎ちゃんが走る!」  果歩の目が一人の男子の姿を追う。  トラックを走っている数人の中の一人、川島慎吾は果歩の彼氏だ。  果歩が毎週この競技場に見学にくるのは、その慎ちゃんの雄姿を見るためなのだ。  それに大人しく付き合わされているわたしは、かなりのお人好しなのかも。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

41人が本棚に入れています
本棚に追加