1  止まった時間

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「ねえ、わたし帰ってもいいかな。どうせ帰りは別なんだし」  一応、そう言って抗議はするんだ。  見学している間はいい。でも、練習が終わったら、果歩と慎ちゃんは一緒に帰るのだ。当然、わたしは別。  一人で帰るその虚しさと言ったら……。 「やーだよ」  にべもなく果歩は舌を出す。 「一人で見とくの、退屈だもん。それにさ」  果歩が意味ありげにニヤついた。 「最近は鈴もいい感じじゃん、透くんと」 「いい感じって――」 「あ、ほら。ちょうど透くん跳ぶよ」  果歩がフィールドを指差した。  そこでは高跳びの練習が行われている。  今スタートラインに立っているのは、クラスメイトの二条透だ。
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