2.ピンクチラシパンサー

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 杉山の奢りで酒もさらに追加される。 この女は両方とも潰してしまえとばかりに注いでくる。 しかし朝倉の気も知らずに杉山は話を展開していった。 「僕の知り合いに映像収集家がいましてね、嘆いてましたよ。創作性が無くなったって。 ポルノは衰退していく一方だって」 「分かります~」 朝倉の可愛らしく語尾をクルンと上げる攻撃に必死で耐える、かなりボディにくる。 「VHSやベータ、ましてやDVD、BDに触れずにスマホの小さな画面でトイレでするらしいですよ、昔は映画館で皆してたのに。あ~嘆かわしい」 「でも高速化とマイクロ化って言えば進化とも言えるんじゃないですか?」 「ウマいですね~今度アイツに言っておきますよ。流石プロは目の付け所が違うな~」 モモンガのように垂れた二の腕をペチペチと叩きながらドヤ顔をこちらに向けてきた。 「一番儲けた時ってケータイが出始めたなんですよ」 「成る程、やはり個人ツールの発達ですか」 アカデミックと見せかけてバカな会話は底を尽きる様子を一向に見せない。 「ネットの普及と言えばね地域性が失われつつあるんですよ、昔は熟女系ならここだったのに」 そう言うとファイリングされたピンクチラシを見せてくれた。 さながらビックリマンである。 「年代と地域でかなり特色が出る文化だったんですけどねぇ」 「あ~分かります。私たちも持ち場が新宿だったのが、渋谷の女子高生系に奪われていったり、五反田の本番風俗系に持ってかれたり」 「今はそれすら無いですからね」 「なんか情緒がないですよね」 なぜだろうか急にしんみりとしやがった。 ピンクチラシビックリマンを古いアルバムのようにめくっている。 この流れでおヒラキになってくれるのを願うばかりだ。 枝豆数えも4週目に突入している。 朝倉の手が止まった。
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