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1.テレフォン
「十円玉を二枚用意して、それを合わせて指先で擦り合わせて。
そうそうそんな風に上手よ、とっても。
それで耳に近づけてみて。
金属音の中に水っぽい音が感じるでしょう。
通話口のところでね、それをコスるの。
分かる? チャリチャリクチュクチュって音。
これはねテレフォンセックスが流行った時代に使われていた効果音なの。
アソコに指を入れている音と、毛がね、ジャリジャリとぶつかる感じを表すのにちょうどいい音なの」
当時テレフォンセックスで荒稼ぎしていた朝倉さんは、その話を嬉しそうにしていた。
「実際の音は違うけどね」
そう付け加えて意地悪そうに笑った顔がなんともゴリラで私は少し引っぱたきたくなった。
狭い居酒屋のカウンターに横並び、手を振りかぶる距離もない。
つまり私の逃げ場はどこにも無いのだ。
「あの頃は童貞も必死だったのよね」
なんとなく祖母の家ような臭いのする女は饒舌に語ってくれた。
「今の童貞はダメ、全然ハングリーさが足りないのに知識だけありますって顔するの。
ネットで簡単に無修正が見れちゃうですもん。もう頭でっかちで使えない大卒みたい」
「そんな下品な事を大卒に例えないで下さいよ」と私は薄ら笑いを入れながらツッコんだ。
職場で唯一大卒である私への当てつけなのか、それともただの例えなのか。
久々の酒に私は想定していたよりも酔ってしまい、この女の話を聞くしかなかった。
「やっぱりね想像力の欠如とか活字離れの影響よ、絶対。あんたフランス書院とか鬼六先生とか読んでないでしょ」
その通りだとは思うのだが、その2つを活字の代表格にしないで貰いたい。
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