(二)

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(二)

平成の初めにはバブルというものがあったそうだ。群馬の片田舎で育ったわたしには、バブル期らしい華やかな時代の雰囲気を感じた覚えがない。家の周りは田んぼと川で、国鉄立った頃から運転手だった父と、公務員だった母は地味にボロ屋に暮らしていた。中古で買ったその川っぺりに建つ家は、ちょっとした雨でもすぐに雨漏りをした。 その頃、ヒロシは働き盛りの二十代で、東京で派手に仕事をして、毎日タクシー券をもらって遊び歩いていたんだと思う。詳しくは話したがらないけれど。 ベルリンの壁が崩れて冷戦も終わり、時代はたいらかになったかと思ったけれど、バブルは平成のわりと早い時期にはじけて、平成不況がやってきた。大人たちは不況だ、不況だと騒いでいるけれど、日本の歴史を習い始めた私は、今はとても平和だと思っていた。小学校の上空には青空が広がり、そこに爆撃機が飛ぶことはない。平和過ぎてつまらないくらいだ。
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