(二)

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テレビからは連日流れるオウム真理教のニュース。しょーこー、しょーこー、しょこしょこしょーこー、あーさーはーらーしょーこー。ショウコちゃんは可哀想だったなあ、いつもその歌でからかわれていた。 運輸業者のだだっ広い倉庫、そのすぐ隣にある廃墟みたいな工場が第○サティアンだなんて言って、みんなでのぞきに行こうとしていたっけ。 そうこうしているうちに、神戸連続児童殺傷事件が起きた。鬱屈した平和と閉塞感。身の周りの世界は平和なようでいて、すぐそこに身を潜めているどす黒い何か。それは酒鬼薔薇聖斗と同世代のわたしの中にも流れているのかもしれない。 学校に持ち込み禁止だったポケベル。実物は見たことがなかったけれど、憧れだった。 髪の毛を少しだけ明るくして、当時はやっていた漫画の『ご近所物語』みたいなツインテールにした同級生がこっそり鞄にしのばせていた。雨が急に降り出した日は、中学校の公衆電話から、専門学校へ通っているというお姉さんにメッセージを送るのだ。数字だけの羅列で? どうやって?  でもちょうどそのころ、ヒロシはだれか女の人のポケベルを、なんでもないことのように鳴らしていたんだろう。33414。それしかしらない文字列の綴りを、ときどきちゃかしてLINEでヒロシに送る。アキコちゃん、よくそんなの知ってるね。ところで今日、あいてるの?
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