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「小松崎部長、金子さんとお知り合いなのですか?」
監督と主役の湊、そして僕も一緒について行った。少し離れて莉佳子もいる。
「監督、おめでとうございます。楽しみにしています」
優一朗は、無駄にいい顔と声で監督に映画の完成のお祝いをいった。
「沢山の花束や、現場への差し入れありがとうございました」
「いえ、雅がお世話になりました」
「え、雅?」
全員の目が僕に注がれる。
「ああ、たしか金子くんの所属事務所は、小松崎グループでしたね」
「いえ、雅とは、親しいのです」
といって、僕の手を引き隣に立たせた。
顎が落ちそうですよ、莉佳子さん。
「……このピアス似合わないが」
右の耳をひっぱり、僕の耳もとに囁く。
「彰も来てるよ」
「ええっ部屋に行ってもいい?」
はたからみたらイチャイチャしているように見えるだろう。うん、見せてるんだよ、湊君。
「お前にならいつでも開けておく。お前もだ、彩」
少し離れたところにいた彩を抱き寄せ、耳元に囁く。
「明日は休みにしておいた」
彩は、少し恥ずかしそうに、言葉なく頷いた。
「優一朗、僕はまだここにいるけど」
「ああ、私は監督に挨拶に来ただけだから、部屋にもどるよ。彩、着いてこい」
その瞳の色気に、その辺りにいた女達がどよめく。
「ええー帰っちゃうんですか? 一緒に飲みませんか?」
「いや、今日は二人に用事があったから来ただけだ。あなたは?」
有名だと自負している莉佳子さんが、明らかに衝撃を受けている。
「莉佳子です」
「そう。小松崎優一朗だ」
莉佳子の指先をとり、貴婦人にするようにそっと唇が触れる。貴族的な優一朗がやれば、周りから黄色い悲鳴が聞こえてきた。
優一朗は、彩を連れてホールを出て行った。ああ、面倒だ。僕も連れて行ってくれたらいいのに。まぁ、出演者の僕まで行くわけにいかないか。
「みーやびー! お前、どんなコネクションだよ。あれ最大のスポンサーの会長の弟だぞ」
「……級友ですよ」
「マネージャーとはどんな関係? ていうかお前も?」
「級友だっていってるじゃないですか?」
「級友は腰抱いたり、耳つねったりしないだろうが」
「僕の級友はするんですよ」
「何て呼んでるの?」
「優一朗ですけど」
ありえないーと叫び声がホールを木霊した。
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