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「彩ちん、どうしたの――」
雅は、僕がヨーグルトを顔にぶつけたことを怒っていないようだった。そういう寛容なところが雅にはある。僕がやられたら、しばらく口をきかないだろうに。
「雅……」
「ごめんね、彰の前でイチャイチャするの嫌だった?」
僕は、落ち着こうと思って開いた本を横に置いて、雅を見上げた。
「どうして……」
何故そこで彰が出てくるのだろう、嫌なのは雅のはずだ。
「彩が、彰のこと好きなのは知ってる――。でも僕を選んでくれたんだと、思ったんだけど。違った――?」
「彰のこと、好きなのはお前だろ――? お前は、今まで人前でうたた寝なんてしたことなかったのに――、彰だから、平気だったんじゃないのか?」
「え、この前の画像? 別に彰が好きで寝たわけじゃないよ。確かに今までの友達と彰は違うけど、それは彩が彰のことを気にいってるから――」
僕は、彰を気にいってる。それはその通りだ。何故だかわからないけれど、彰は何故か僕のように他人の気配に敏感な人間でも気にならないのだ。特にこの学校は個性の強い人間が多い。そんな中で、彰はなんていうか……。
「ほっとけないんだよ、彰って」
「うん。会長があんなに夢中なのに、気付いてないし。周りの悪意にも鈍感で、なのに、どこか繊細なところもあるんだよね……」
あれを繊細というには、些か語弊があるけれど。
「ちょっと待って。彩ちん、本当に彰のこと好きなんじゃないの? 僕はずっと、そう……」
そうだ、雅は僕が彰のことを好きだと思っていた? 何故――?
「雅が、彰のこと……。あのさ、凄く聞きにくいんだけど……」
これは、今、訊ねないときっとうやむやにしてなってしまって、もやもやするのがわかっていたから、勇気を振り絞ることにした。
いや、夢ならいいんだ。夢だというなら、「ごめんごめん」と済ませればいい。
「何? 聞きにくいことって――?]
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