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どうして、こんなに惹かれるのだろう――。
僕にとって彩は、誰よりも近くて、愛おしいものだった。
そっと唇を寄せて、彩の着ているものを上から順に開<はだ>けていった。
「雅……」
恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながらも、彩は僕を止めない。許されていると感じるだけで、僕は酩酊してしまいそうになる。
「彩、唇、あけて?」
戸惑ったように視線を彷徨わせてから、彩は覚悟を決めたように目を瞑って、唇に入っている力を抜いてくれた。合わせた唇の熱さは、知っている。
彩はこの前が初めてだと思っているようだけど、僕は何度も彩にキスをしている。でも、こんな風に震える舌を味わったことも、逃げる顔を追いかけることも、初めてだ。
「雅――っ!」
唇を食んだら、彩は僕を制止して、恨めしげに目を細めた。
「どうしたの?」
「お前、何でそんな……慣れてるんだよっ」
まさかの言葉に、僕は呆然とした。慣れているわけがない。だから、自嘲気味に歪んだ顔を隠さずに正直に言った。
「寝てる彩に何度もキスしたからかな?」
彩、僕の心を受け入れて――。
「……馬鹿――。勝手にするな」
彩は、凄く驚いたように呆けた後で、顔を背けた。耳の先が赤い。
僕だってしたかったのに、とか、全然気付かなかったとか、独り言を蚊の鳴くような声で呟いた後、僕の顔を引き寄せて言った。
「僕だって練習する! 雅は動くの禁止!」
そうだ、彩は負けず嫌いなところがあった。
「でも、彩。大丈夫?」
「雅が上手なんだから、僕だってすぐに上手になる!」
心配しているのは、そういうことじゃなくて、彩は僕より照れ屋だから出来るのかなっていうことなんだけど、彩は馬鹿にされていると思ったようだ。
これ以上僕を煽ってどうするつもりなんだろう? 僕、もう結構ヤバいんだけど。
「じゃあ、僕横になるから、彩、好きにしていいよ」
こんなところで喧嘩になっても僕は困るし、彩の好きにさせようとベッドに横になった。寮のベッドは、背の高い僕達でも余裕の広さがあるし、二人で運動しても平気なくらいの頑丈さはありそうだ。
「え、あ……」
僕の体勢が変わったことで、彩は困惑したようだ。それでも持ち前の気の強さと、好奇心旺盛な性格で、僕の上に跨がった。
「いいよ。好きに練習して」
僕には他にすることもあるし。
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