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「もし、本当に我慢出来なかったら、蹴ってもいいから止めてね」
「……出来れば言葉で止まって欲しいんだけど」
「努力するけど、駄目かもしれないから」
雅は僕の片脚を肩にかけて、反対の脚を広げた。僕も演劇のために柔軟をずっと続けていたから、身体はやわらかいけれど、どうしていいかわからなくて、とりあえず雅の顔を見ていた。
「そんなに見つめられると緊張する」
どんなに沢山の観客の前でも緊張なんてしたことのない雅が、僕の視線ひとつに緊張するというのが面白い。
「じゃあ、妖艶に誘ってみようか?」
ちょっとわざとらしいけど、挑戦的に視線を送り、少しだけ舌をだして、自分の唇を舐める。
「あっ、ちょ、それは駄目――っ。彩は入り込むと役柄になりきるから、駄目だって。僕は、素の彩を抱きたい……」
「ふふっ、雅は正直だね。わかった。優しくしてね」
辛いものを耐えるような顔をして、雅は「そういうの、天然で彩は小悪魔なんだよ」と笑った。
雅の中を僕は、どんな人間なのだろうと、不思議に思いながらつられて笑った。
「挿れるね」
ギュッと目を閉じると、雅は僕の内ももに安心させるように優しくキスをした。
「あっ! はいって、くる……」
大きな塊は、ゆっくりと僕の中をこじ開けながら進んできた。
「大丈夫……?」
「ん……、苦しいけど。無理じゃない」
引っかかるところは、僕を揺すったりして、時間をかけて雅は全てをおさめた。
「僕、生まれてきて、一番幸せかも……」
「大げさだな――」
あがる息を整えながら、額の汗に張り付いた僕の前髪をすいて、雅は言った。
僕もそう思ってたけど、誤魔化した。だって、二人で認めてしまえば、これ以上の幸せがこないような気がしたから。僕は欲張りだから、雅とならもっと……と、思ってしまうのだ。
「一つになれたんだよ……。僕達、別々に生まれてしまったけど、本当なら一緒になれるはずだったのに」
「ふふっ、雅はロマンチストだね。僕は別個に生まれてきて良かったと思う」
「どうして――?」
僕の顔を見ようとした雅が動いて、「あっ」と声が上がった。本当に一つになろうとしているんじゃないかと疑うほど馴染んだ雅のソレが、僕の声を聞いて暴れようとする。
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