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「こうやって見ると、うちの子供は皆でかいなぁ」
「ほんと、墓場が狭く見えるね」
一番低い彩だって、百八十超えたから、確かに巨大一家だ。
「彼女は大きいの?」
「いや、百五十ちょっとかな」
「ちっさ!」
「ていうか、何? 誰の彼女の話? え、親父? ぎゃー! 俺に出来なくてなんで親父に出来てるんだよ」
ギャーギャーうるさいから、先に帰ろうと彩を引っ張ると手を繋がれた。いや、別に僕達はずっと仲がいいから、手を繋ぐくらい変じゃないけれど、どうしたのかなと彩の顔を見つめると、赤くなっていた。
「彩っ! 親父、彩熱中症!」
「ええっ! 病院、病院!」
「大丈夫だよ、ちょっと暑いだけだから……」
「コンビニによって氷調達して、冷やすぞ。スポーツドリンク飲ませて!」
慌てて帰ることになってしまった。結局、彩は熱中症ではなく、風邪だった。熱があったのに、お墓参りを優先したせいだった。兄貴達は忙しいから、気を遣ったんだろうけど……。
「彩、具合悪いときは、ちゃんと僕に言って」
気づけなかった自分が腹立たしい。口調がキツくなってしまったけれど、僕は謝らない。
「ごめんね、雅。遊びに行く予定だったのに……」
「そういうこと言ってるんじゃない。彩は、気を遣いすぎ!」
髪を撫でると、黙って目を閉じた。
「だって、墓参りのために仕事休んできてるのに……悪いだろ?」
「だからっ、彩が無理して具合悪くなったら、皆が心配するだろう? 彩のこと、大事に思ってるのは、僕だけじゃないって、わかってる?」
彩のこと、僕以上に大事に想っている人間はいないけど、どこか保護欲を刺激する彩は生まれ持ってのタラシだ。僕が緊張感をもってしまうのは、仕方ないことだと思う。
「雅?」
無防備に笑う彩の顔に、キスをした。まだ、唇が熱くて、熱があるのはわかっている。
「キスだけだから――」
実家でやろうなんて思ってない。
薬が効いてきて少しぼんやりした彩の視線は僕を拒んでなかったから、もっとと深く口付けた。熱い舌を絡ませて、早い鼓動を掌で聞いた。
「ん、んんっ」
微かな振動を指先に送ると、彩は身体を震わせた。
「あや……」
これ以上は、彩の熱が上がっては困るから、止めた。
「みやび……」
物足りなさそうなこの顔、理性をうばわれそうなそんな瞳で、僕を呼ぶ。
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