運命ならそれでいい

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 コンコンとノックが聞こえて、誰かが部屋に来たのがわかるから、彩の布団を目元まで上げて「どうぞ」と言った。 「どうだ?」 「さっき薬飲んだから大丈夫だと思うけど」 「雅、お前も熱あるんじゃないのか? 顔が赤いぞ」 「え、そんなことないよ」  キスしてたからかな?  「ほら、お前も熱あるじゃないか。薬持ってくるから、一緒に寝てろ。熱で寒いって彩が……」  一瞬で眠りに落ちたらしい彩が、「寒い……」ってうなされている。  僕達のベッドはよく一緒に寝ちゃうから大きいのを買ってくれていた。二人で寝ても問題はない。親父にシャツとズボンをとられて、下着だけで彩の横に入り込む。 「彩の方が熱は高いけど、お前も風邪だな。そういえば、いっつも一緒に風邪ひいてたなぁ」  中学からは寮生活だけど、小学校の頃はいつも同じように風邪をひいてったっけと、親父の言葉で思い出した。 「彩は雅にべったりだなぁ。これじゃ彼女は無理じゃないか?」  知ってか知らずか親父はそんな風にいう。 「僕がべったりなんだよ」 「うん、お祖母さんが言ってたよ。お前達は、ずっと一緒にいる方が幸せだと思うって」  さすがお祖母さん、よく僕達のことをわかっている。 「親父は……」  気付いているんだろうか。 「お前達が幸せなら、さ。俺は何でもいいよ」  そう言って、部屋を出て行った。 「バレちゃってるみたいだね……」 「起きてたの?」 「うん、寝てた振りしただけ」  振りに見えなかったよ、彩。ギュッと僕を抱きしめて、彩は熱い身体を押しつけてきた。 「駄目だよ」  僕の薬を持って親父が来るから。 「寒いんだ……」  そう言われれば、僕に残された台詞は一つしかなかった。 「僕が温めてあげる」  僕達は、生まれてずっと一緒だった。幸せも悲しみも分け合って生きてきた。こうして抱き合うと、どこからどこまでが僕で、彩なのかわからないくらいだ。でも、きっとそんな時期は終わりが近い。僕達は不安を抱えて生きていかなければいけない。  でも、彩がいれば、僕はどんな道のりだって越えて、彩の元に帰ってくる。僕いれば、彩の場所はここにあるのと同じで。  青い鳥を探しているわけではないけれど、幸せは、多分僕の横にある。                                <Fin>
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