パーティ

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「いいよな雅。次は主役だって?」  一緒に映画に出ていた主役の男は、そう言って雅にグラスを渡した。 「いいでしょ」  にっこり笑うと、「もうこいつ、自信ありすぎ」と呆れたように隣の女優に話しかける。 「短期間で、こんなにプッシュされるなんて、あのマネージャーのお陰じゃないの?」 「彩?」 「そう、君の双子の弟さんだっけ? 彼が枕営業でもしてるんじゃないの?」  毒を吐くので有名な女だ。顔の良さと性格の悪さは反比例という、よくあるタイプだけど、笑い方を変えてやった。 「こわっ、雅。そんな顔もできるのか……」  驚く湊に舌を出してみる。 「彩に任せてるようじゃ僕も情けないですね――」  スッと女の頬を撫でると女優、莉佳子は以外に純情だったのか真っ赤になって俯いた。 「おいおい、雅止めろって。共演者に手を出したら、後で面倒だぞ。事務所が」 「そんなつもりはないですよ、湊さん」 「でもほら、マネージャーさん、お尻触られてるし、名刺もらってるし。あながち冗談じゃないんじゃないの?」  相手にしていない二人の雰囲気に気付いたのか莉佳子は、気を引くように指さした。 「うわっ、あれ、小松崎の……」  湊は、慌てたようにたたずまいを直した。彩のお尻を触った男の手を締め上げた男の存在故だろう。同じように緊張した雰囲気がホテルのホールを包んだ。 「ええっ、こんな映画の打ち上げになんか来るの? 私も紹介してもらわなきゃ」  莉佳子は、髪を指で整え顔を作る。口を開かなければいい女に見えるのにと、雅は呆れた。 「こ、小松崎部長――」  悠然とした男の肩書きに、部長の名は相応しいが、年齢にはそぐわない。知らないもの達は首を傾げている。どっかのボンボン? と不思議そうな声も聞こえてきた。  彩が驚いたような顔で優一朗を見上げていた。彩も来るとは聞いていなかったようだ。映画のスポンサーとはいえ、優一朗は海外にいてるものだと思っていたし。 「小松崎さん……」 「こんな場所で男の尻を触る人間がいるなんて……」  優一朗の侮蔑の籠もった視線に怯んで、尻を触っていた男は逃げていった。名刺を渡していたプロデューサーも同じように消える。  すっきりした――。
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