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「ファーストキスが・・・・・・芹沢先輩?」  寒気をしたように腕をさすり、彩は俯く。芹沢先輩は部長ってこともあるけれど、結構男前だ。彩が女のこだったら、ファーストキスの相手として不足はないだろう。 「じゃあ先に僕とする?」  ごめんね、彩。もう既にファーストどころか百回以上してるけど、それは内緒だ。眠りの深いことを神様にいつも感謝しているよ。 「・・・・・・しない――。そんなことでしたくない――」 「彩はあれだ、海岸でとか、夜景を見ながらとかでないとだめなの?」  山の景色なら見れるけど。 「そんなことを言ってるんじゃないよ。キスとかは、やっぱりまだ早いと思うんだ」  彩は、お祖母さんの影響を受けているから、結構古風なのだ。 「そうだね」  僕は少しホッとする。だって、僕とじゃ嫌って言わなかったし、まだ早いってことだけみたいだから。  芹沢先輩は、多分彩にキスはしないと思う。何故なら去年部長だった吉村先輩の恋人だし。中学生の学生コンクールだしね。彩の色香に惑わなければの話だけど。 「でも雅、照れると耳の先が赤くなる癖があるね。ほら、ちょっと熱い」  僕の耳を摘まんだ彩に、「同じだよ。あーや、流石僕ら双子だね。癖まで一緒だ」と笑いかけると、自分の耳を触って「熱い・・・・・・、本当だ」と彩はお腹を抱えて笑いだす。  僕たちの春が来るのは、もう少しだけ先のようだった。
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