運命ならそれでいい

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「帰ろう――」  疲れた顔で彩が言う。同じように生まれたはずなのに、彩は僕より繊細だ。この病院の雰囲気だけでも消耗しているように感じた。 「うん、皆待ってるよ」  高校はまた全寮制の男子ばっかりの学園だ。そこは、いいことも嫌なこともある。けれど、この年になって初めて僕たちに仲のいい友達が出来た。  彩は、多分そいつ、彰に惚れている――。 「彰に何かお菓子でも買っていってやろうか」  僕がそういうと、彩はクスッと笑って「そう言いながら、自分が食べたいだけだろ?」と言う。 「彩ちん、なんでわかるの?」 「そんなのわかるに決まってる、雅のこと、わからないわけないじゃないか」  クシャっと僕の髪を撫でて、彩は笑う。    彩はわかってないのに――。ねぇ彩、僕の本当の気持ちわかって――。 「ほら、クレープ売ってるぞ、皆にはドーナツでも買い占めていく?」 「僕、クレープよりたこ焼きがいいな」 「じゃあ、僕はクレープにするから、一口交換」  山盛りのドーナツを買って、山の上の僕らの家に戻る。 「すげー、こんなに沢山買ってきたの?」 「好きなだけ食べていいよ。彰、大きくなんないもんな」  眼鏡の奥で、拗ねた目をする彰。 「うるさい・・・・・・。おまえたちだけはおれの味方だと思ってたのに、二年過ぎてからニョキニョキ伸びやがって――」  最初に出会った頃、三人は同じくらいの身長だった。 「彰も伸びるよ」 「当然! 最終的におれが一番伸びている予定だからな」 「その前に牛乳の飲み過ぎでお腹壊しそうだけどね。ほら、小魚フレークって売ってたから買ってきてやったよ」 「雅、お前・・・・・・そんなことばっかり言うなら・・・・・・」  スマホを取り出し、画面を見せる。 「あ、何撮ってるんだよ。彰、こら」 「何々? 雅、彰に弱み握られてるの?」  興味津々に彩がスマホを取り上げる。 「別に、唯の寝顔だよ」  僕が彰と一緒に勉強をしていた時に眠ってしまって、それを撮られただけのものだ。別に弱みでも何でもない。 「涎つきだけどな――」  彰の突っ込みに「うるさい!」と返して、彩を見たら、彩が硬直していた。 「彩ちん?」  彩の様子が変だった。
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