第二章

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「こんなに喋ったの、久しぶりだな……」  伊原はごくりとビールを飲むと、しんみりとした調子でぽつりと呟いた。  今勤めている会社での仕事の話や、学生時代の思い出話、音楽やスポーツの話、三年分のブランクを埋めるようにとりとめなく話す伊原に相槌を打ちながら、槇はすっかり無防備に酔っ払っていた。  まるで、あの夜と同じ情景だ。  だから、最後に蕩けるような笑顔で「家、来ないか」と誘われて断れるわけなどない。  槇はその顔から目を逸らせられないまま魅せられたように、こくりと頷いた。
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