第三章

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 心の底がすぅっと冷えていくのを感じる。もちろん、伊原が高専を卒業した後に男も女も含めて誰ともそういう関係になっていない訳がないと、頭ではわかっていた。だけど、こんな風に生々しい証拠を見せ付けられることで思い知らされたくはなかった。現実など知りたくはなかった。  ただ、それを悲しいと思っても、拒めるわけなどない。浅ましくも、また抱いてもらえることを身体は喜んでいるのだ。  再びのしかかってきた伊原と改めて唇を合わす。舌を絡み取られ、吸われる。その間にも伊原の手は忙しなく槇の身体の上を動きまわり、槇の腰のベルトを解くとファスナーを開き下着の中に指を滑らせた。 「ん、ぅん……」  既に少し反応しはじめていたものを伊原の手が包み込む。ゆるゆると揉み込まれて鼻から甘ったるい吐息が漏れる。  伊原は唇を離すと鼻先にちょんとキスを落とした。 「少し、腰あげて」  槇は言われるまま素直に腰を浮かせた。ズボンと下着を引き抜かれ下半身が露わになる。羞恥に身を捩ろうとするが伊原はそれを許さなかった。太ももに手を置きぐっと拡げるように抑えると槇の中心に顔を寄せ、ぺろりと舌先で茎を舐め上げる。 「あっ、や……!」  根元から先端に向かってゆっくりと食むような口付けが繰り返されていく。くびれの部分をくるりと舌でなぞられ、甘い息が漏れた。久しぶりに与えられた強い快感に目が眩む。 「んふ……、ん」  温かい口内に包まれ、唇で何度か扱き上げられて槇は閉じた瞼の内側にチカチカと火花が飛び散るのを見た。  しかし、ちゅっと音を立てふいに伊原は顔を離した。高まった熱は放出される間際に行き場を失い、槇を酷く苛む。はしたなくねだったりすることもできず、槇はただ荒い息を吐きながら目をぎゅっと瞑った。
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