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オフィスに戻ると槇は、岩本に今日の打ち合わせの内容を簡単に報告した。岩本は興味のない様子で、書式にまとめて提出するよう言った。槇も特に何かを期待していたわけではないので、「わかりました」とその場を辞した。
その後、一息入れようと休憩室に向かい、自販機でいつもの砂糖増量のカフェオレを買った。
「槇ちゃん、おつかれー。打ち合わせ、どうやった?」
西がいつもののほほんとした調子で休憩室に入ってきた。特に相談事を持ちかけたり、愚痴を言ったりしている訳ではないが、西は何かと槇の事を気に掛けてくれている。その上あまり押し付けがましくならないよう、さりげなく振舞ってくれるのがとても有難い。だから、槇も西に対しては気負うことなく、素直に向き合うことができた。
「うん。相手の人が話しやすい人だったから、結構いい感じに進められたと思う」
「へぇ、よかったやん。んじゃ、はい。これご褒美」
にっこり笑ってそう言うと、西は誰かのお土産でもらったらしい可愛いパッケージに包まれた洋菓子をポンと手渡してくれた。
「わ、ありがとう」
甘い物に目がない槇は、受け取ると早速そのふわふわのスポンジケーキを頬張った。
「槇ちゃんは本当においしそうに食べるよねぇ。餌付けのし甲斐があるわぁ」
西はカウンターテーブルに頬杖をつき目を細めて、槇が食べる姿を観察している。
「餌付けって何だよ。俺は裏庭に現れるタヌキか」
むくれたフリをしながらぷぅっと頬を膨らませると、西は「その喩えのチョイスはおかしい」と声を出して笑った。
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