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第五章
クリスマスイブ当日。
槇と伊原はいつもの金の時計台の下で落ち合った。いつもなら飲み屋に向かうところだが、今日はそのまま私鉄電車に乗り、伊原の家の最寄駅で降りてから近くのスーパーに入った。店内はクリスマス一色。緑と赤と金色のストライプのデコレーションと陽気なクリスマスソングが槇の気分をわくわくさせた。
ショッピングカートを押す伊原と並んで一緒に食材を選ぶのも新鮮で、楽しくなってしまう。蟹や白菜、豆腐など二人で食材を吟味しながらカゴの中に詰め込んでいった。
「へー、今時はこんなモノまであるんだな」
伊原は、鍋用のスープが並んだ棚のところで頻りに感心している。少し悩んだ末、無難に寄せ鍋用のだしを選んだ。
惣菜コーナーではずらりと並ぶローストチキンやオードブルをしげしげと眺めた。二人とも食料品や日用品はコンビニで済ませていて、スーパーとは縁遠い生活を送っているので物珍しいものばかりなのだ。
伊原は「折角クリスマスだし、トリモモも買っておくか」などと言ったが、槇は「そんなに食べきれないよ」、とすぐさま却下した。『トリモモ』なんて言い方も伊原っぽくていいな、と思わず笑みが漏れる。
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