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ぐつぐつとおいしそうな湯気をあげる鍋を前に、シャンパンで乾杯した。
すっかり寛ぎ、「たまには家飲みもいいな」とにこにこしながら鍋をつついている伊原を見ているだけで、槇は幸せな気持ちになれる。
「あの、これ俺から。クリスマスプレゼント」
酒が入ったことで少し気分が落ち着き、タイミングがわからなくて傍らに置いたままになっていた箱をおずおずと差し出した。
琺瑯のキッチンウェアで有名なフランスのメーカーが作ったマグカップ。落ち着きのあるオリーブ色で、胴の真ん中辺りがなだらかに括れている。
「なんか見た目といい持った感じといい、すごく気にいっちゃって。伊原、コーヒー飲む時湯呑みだし良かったら使って?」
「あー、食器とかも揃えなきゃと思ってたんだよな……。んじゃ、今度は俺が槇の分買っておいてやるよ」
ぎくり。実はこのマグカップはペアとして売られていたものを店の人に無理を言って一つずつ包装し直してもらったのだ。もう一つは自分用に寮の自分の部屋においてある。伊原が寮にくることはないから、こっそりペアでもバレることはないはずだけど。後ろめたい気持ちになった槇は慌てて話題を逸らした。
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