第六章

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 百貨店が入っているビルに到着すると、鹿賀の待つ社内システムのサーバを設置している部屋に向かった。IT推進室のさらに奥、IDの認証が必要な扉をノックする。 「ごめんね、こんな遅くに」  扉を開けた鹿賀は槇の姿を認めると、すぐにすまなさそうな表情を浮かべた。 「いえ、こちらこそ申し訳ありません。データがおかしいというのはどちらの箇所ですか」 「この表の、売掛金の欄なんだけどね……」  調べてみると確かにプログラム上のミスがあったが、それは槇にも修正が可能な初歩的なものだった。ただ、修正自体はすぐに終えたものの、その日一日分の売掛金の決済日のデータがエラーで弾かれてしまっていた。それを翌朝システムを稼動させるまでに、全て修正しなければトランザクションデータにまで影響が及ぶ可能性があった。  槇は時計を確認すると、鹿賀のほうに向き直り「すみません。今から至急、直します」と頭を下げた。  システム開発部に連絡を入れれば必ず誰かが残っているだろう。SEの誰かにヘルプを頼むこともできたが、彼らは自分よりもタイトなスケジュールの中で仕事をこなしている。できるなら、手を煩わせたくはない。データの修正だけなので、槇が一人で徹夜をすればなんとか翌朝までにはすべて仕上がるという目算があった。 「君って人は……。で、どこをどう見ていけばいいの?」
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