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翌朝から二週間かけて、親熊の姿であったキムンカムイのイオマンテの準備が進められ、無事魂が送られた。そして、子熊はイナウチパに近い神聖な場所に建てられた小屋へと招かれていた。
次の冬が来るまでの間、コタンで家族同様にもてなした後、親熊であったカムイの待つ神々の国へと送られるのである。
ウパシは妻に娘の仇を取ったのだと語ったが、『娘の魂は神々の国で幸せに暮らしているのだから』と言われ肩を落とした。
それから毎日、雪降る日も風吹く日も、ウパシは他の民と同じように、子熊のいる小屋へと足を運んだ。人と同じ食事を与え、歌や神謡を聴かせたりもした。
娘を奪ったものの子として、憎んだり恨みもしたのだが、その感情をぶつけるには、あまりに信仰が日常的でありウパシ自身もわからなくなっていた。憎悪と呼ぶには優しすぎ、恨みと呼ぶには曖昧な気持ちに、疑問符ばかりが浮かぶのである。
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