ウパシの涙

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 季節は巡り、北の地が再び雪に覆われた厳冬。  ある眠れない夜、子熊の鳴き声が聞こえチセ()をそっと抜け出した。ちらちらと舞い落ちる雪片がウパシの肩に薄っすらと積もっていく。     小屋の前へ行き屈んでみると、まるでオオカミの子供が母を呼ぶような、何ともか細い声で鳴いていたのである。  どうすることも出来ずただその様子を眺めていたのだが、子熊は段々と落ち着き始め、ウパシのいる柵の前に寄り添うようにして寝息を立て始めた。  無垢なその姿は、ペウレプカムイであることを忘れさせ、まるで我が子の生まれ変わりのようにも思える。  ほうと吐き出した溜め息が白く浮かび、身を切るほどに凍えた空気へ混ざって消えていく。小さく首を振るが、一度過ぎった思いは膨らむ一方であった。  親の温もりが恋しいのだ、とウパシは理解した。代わりになれるものならばと静かに手を伸ばし、上下する背を撫でてやる。手の平から伝わる子熊の体温は愛おしく、安らぎを得た一方で、親熊を奪ったのが自分である罪悪感と霊送りという信仰の狭間で葛藤し、息苦しさが募る。  イオマンテは数日後に迫っていた。
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