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朝からお電話がかかってきました。私はちょうど廊下にいたので、受話器を取りました。
「はい、愛郷です」
「おお雪奈か」
お父さんからかかってきました。今日はお仕事の関係で朝早くから家を出ると昨日言ってました。
「どうしたの?」
「いやー、そのなんだ。試験、頑張ってこいよ」
「頑張ります」
しばらく声がありません。まだつながっていると思います。
「……まあそれだけだ。じゃあな」
「うん」
でもすぐお電話が切れちゃいました。
「雪奈、頑張ってね」
「はい」
私は靴をしっかりと履きました。
「雪奈、ちょっとだけじっとしてて」
お母さんにそう言われたので、立ったままじっとします。
襟と髪飾りを直してくれているようです。
この髪飾りは高校へ体験しに行ったときに付けていたのと同じ物です。
「いってきます」
「いってらっしゃい」
私は玄関のドアを開けました。
外に出ると寒いです。でも雲は少なくいいお天気です。
(試験、かぁ)
私、中学三年生の愛郷雪奈は、今日、志望する高校への入学試験の日がやってきました。
友達である小町秋くんと一緒に、これまで勉強してきた力を発揮する日です。
秋とは駅で待ち合わ
「や、やあ」
せていたはずなのに、秋がすぐそこにいます。
「おはよう」
「おはよ」
そっくりさんなんてことないよね?
「小町秋さんですか?」
「は? あ、ああ」
本物さんのようです。
「……なんか、駅まで一緒に歩きたい気分になったから、さ」
「うれしい」
気合が入りました。
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